上腕を水平あたりまで外転または挙上させると、前方では烏口腕筋、前鋸筋、広背筋肋骨部が見えるようになり、後方では肩甲骨の内側縁が外向きに傾斜し、三角筋後部に隠れていた小円筋が見えるようになる。つまり表現や再現できる起伏が増え、その結果、作品の見所が増える。
「筋の厚みを解説したものはあるか」と質問を受けたことがあるが、20世紀初頭に僅かにある。図示の場合は、筋単体の形状が判別できる必要があるので、難易度は少し高くなる。1枚目:僧帽筋、2枚目:広背筋、3枚目:脊柱起立筋の胸腰部、4枚目:大胸筋の停止腱。
美術と医学の間にはグラデーションがある。美術、美術寄りの美術解剖学(解剖学にない情報)、医学寄りの美術解剖学(解剖学に近い情報)、医学。人体のどの部分を誰にどのようにして伝えるか。目的に応じて結果が異なってくる。
授業などで紹介している筋構造の概念図。筋の構造は、反対方向から伸びる腱の間に筋線維が挟まれた配列をしている。この概念、良く質問されるので難解らしい。添付は1669年にニコラウス・ステノが発表した筋の概念図。
先日、学生さんが「烏口突起触れる」と言うので「直接触れないだろう」と言ったら、近くに居た別の学生さんが触知出来た。片側の肩を後方に引き、上腕を外旋させ、首を反対側に側屈させると、三角筋胸筋三角で烏口突起が皮下に直接触知出来る。勉強になります。