複数視点がほぼ同一のスケールで描かれた図で学んでいくと、立体的な感覚が養われる。平面のみを手がけていた作家が、あるとき見たことのない視点で描けるようになったり、粘土などの立体像も作れるようになる。
教科書を読んでも身についた感じがしないのは、体験を通していないためだ。パリ国立高等美術学校の形態学講座では、リシェが130年前に描いた図版を今でも模写させると聞く。
以前もご紹介した、足先のバリエーションを足の中節骨の長さから分類したLe Minorらの論文(https://t.co/GkZPokRJlx)。2541人のレントゲン写真から分類した結果はLLLS=30.7%, LLSS=37.6%, LSSS=22.8%, SSSS=7.9%, other=1%でLLSSタイプが多数例。リシェもLLSSタイプ。
20世紀以降の教科書では解剖学的な内容が抑えられ、体表上に直線のガイドラインを引いたり単純な形に置き換える見方が増えた。こうした見方が増えたのは、美術解剖学に関わる教員が医師や解剖学者から美術講師に変わったためと考えられる。添付はVanderpoel "The human figure"(1907)より。
横断面を重ねると普段目にしない真上や真下から見た視点を再現できる。これは古くは16世紀初頭にデューラーが研究していた。体の奥行きを知ることはスカルプターだけでなく、平面を手がける作家にも重要である。