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白髪龍娘とシチューの話 「料理って、ご飯を作ること、だよね?」 「あ、あぁ。そうだな」 アルマの問いに答えると、途端にアルマの目が大きく開いてきらりと輝いた。 「外で食べたご飯みたいなのも、作れるの?」 どうやらアルマは外で出された食事が気に入っているようだった。 最近はセノが近くで買ったパンとスープばかりの生活だったため、恐らくアルマが言っているのは一週間前食べたいずれかの話だろうと推測する。 セノは答える術を持たないため、テオドラの方へ視線を向けた。 「まぁ、具材がそろえば作れると思うよ。何を作りたいかによるけれど」 テオドラの答えに、アルマは一層目を輝かせる。 この一週間、アルマは露骨に笑ったり、怒ったりの感情表現は見せなかった。ただ、今回のようにアルマが目を輝かせて周囲に興味を示しているのを、セノは度々目にしていた。 テオドラの言った通り、アルマには選択肢がないだけだったのだろう。知的好奇心は人並みにあったのだとセノは改めて認識した。 アルマは、少しの間真面目に考えた後、はっとした表情で顔を上げる。そして、それを説明しようと試みるのだが、彼女の語彙にそれを説明できるものはなかったようだ。 しばらく、口を開けては考える仕草をアルマは繰り返していた。 セノはアルマがそのような行動をしている理由に気づかなかったが、それにテオドラがいち早く気付き助け舟を出す。 「名前が分からないなら、見た目とか、味とか、何かないかい?」 アルマはテオドラの質問を聞き、手で平皿程度の大きさの円を作った。 「このくらいの、白い、ミルクみたいな……」 「あぁ。シチュー、かな」 テオドラの言葉で、セノはぼんやりと一週間前の食事を思い出す。 「そういや、最初に食べたのもシチューだったっけか」 セノのその言葉に、テオドラが少し驚いたような表情を見せる。基本的にセノは、昨日食べたものすら普段覚えていない。 にも拘らず、彼は一週間も前の食事--それも他人に食べさせたものの内容を、何となくでも思い出せていた。 「作れるのか? シチューって」 セノはその異常性についてどう思われているかに気付いていないようで、目があったときにこれ幸いにと質問を投げかける。セノもシチューが作れるかどうかには多少の興味があったようだ。 「まぁ、そうだね。かなり昔から作られてきた料理だし、そう難しくないよ」 作れる、というテオドラの言葉にアルマの目がこれでもかと輝く。今まで見たことないレベルの感情表現で、まるで餌を目の前にした犬のようだとセノは感じた。興奮したように、白い鱗におおわれた大きな尻尾をぶんぶんと振るさまは、まさに犬のようで--。 「まて、尻尾?」 一瞬セノは、目の前の尻尾が幻覚かと疑った。ただ、疑うように目をこすっても、目の前のアルマからは大きな尻尾が生えている。 テオドラも気づいたようで、目を大きく見開いていた。 気づいていないのはアルマだけで、キラキラと目を輝かせながらこれでもかと大きな尻尾を振っている。その見た目は、龍の時の尻尾と酷似していた。 「お、お前、尻尾……!! ここで変身とかしないよな!?」 「んえぇっ!? じょ、女性を盾にするのか君は!!」 見慣れない龍の尻尾に、セノがテオドラの後ろへ下がる。盾にされたテオドラがあまりのことに素っ頓狂な悲鳴を上げた。 二人の慌てように、アルマはやっと何かが起きていることに気づいたようで自身の背後に目を向ける。そして、スカートの中から生えている大きな尻尾がようやく目に入った。 「この部屋であのデカさになったら、俺らが潰れて死ぬからマジでやめろよ!?」 「だからと言って私を盾にするな!」