ポッドはライトを持って移動するのだが、光源が移動すると背景も照らされ方が変わっていく素材を描かなくてはならず大変。 釘の影の動きなど撮影処理の工夫で雰囲気のあるシーンになったと思う。
このカットの次のカットは編集の段階で急遽必要となって付け足したもの。 ポッドが瞬間移動しているように見えたため。 他にも作画までできてたけど編集でなしにしたカットもあり。 監督が慣れてなくて無駄な作業をさせちゃった方、すみません…
壁の中を移動するアリエッティ。 滑車を使ったエレベーターも実際のものを作ってみた。 重そうな石に見えるけど、ポッドと同じくらいの重さ。最初のジャンプの加減でいろんな高さへ移動できる。 体重が軽いアリエッティだと勢いがつきすぎるため、ポッドが受け止める必要あり。
大きくて広い台所を表現するのは難しかった。実際の見た目よりも広く描いたり嘘をついて空間を作った。 とはいえ主観だけで台所を広く見せるのは限界があり、第三者目線で小さいアリエッティを入れ込むことにした。 小人から聞いたような不思議な台所の生活音のSEも効いてる。
今夜はラピュタですね。 こちらは僕が唯一描いたラピュタ。 カレンダー用のイラスト(下絵)です。
「風立ちぬ」は「ポニョ」とは一転して影もしっかりついたコッテリ作画です。 二郎のメガネ周辺が面白いです。 止まっている部分も合成を使わずに同トレスにして息づいてる感じにしてます。(動画の人は大変だったでしょう)
翔が角砂糖をプレゼントしているのを見ているので、スピラーは自分なりに考えて野苺をプレゼントしようと思ったのでしょう。かわいいやつ。 あまり考えてないだろうけどアリエッティはそれを受け取る。 (小人たちの未来が明るいことへの願いを込めて入れたシーン)
脚本にはなかったけど、最後に翔に翔らしい言葉を発してもらって終わりにした。 翔は自分の運命と小人たちの運命を重ね合わせていた。アリエッティたちが元気に過ごしている限り、自分の心臓は動き続けるという、生きる宣言。 (冒頭の言葉があるので手術は成功したのでしょう)
宮崎監督からは容易にアリエッティを手に乗せてはいけないと言われていたけど、この手はジェントルマンの差し出す手だし、アリエッティが気持ちを変えて自分の意思で乗っているので大丈夫。 フィギュア愛好家の発想になることを宮崎監督は警戒していた。
青年の二郎の三等車と二等車のシーンは原画やりましたね。
原画を描くとき、僕はこんな感じに最初に全部の絵の計画とタイミングを作っちゃいます。 他の人の仕事のチェックするときは、これに足りなければ描き足すし、余計なら抜く。 どの絵が原画でどの絵が動画用参考か、わかりやすく組み立ててもらえるとチェックは助かります。