大きくて広い台所を表現するのは難しかった。実際の見た目よりも広く描いたり嘘をついて空間を作った。 とはいえ主観だけで台所を広く見せるのは限界があり、第三者目線で小さいアリエッティを入れ込むことにした。 小人から聞いたような不思議な台所の生活音のSEも効いてる。
アリエッティのカバンを開けるカットを入れたのは高畑監督にほめられました。何が入ってるのか気になるのを見せてくれた、と。 本当は内側の生地はかわいい模様にしたかったけど諸々の都合で無地に。 (aigleが作った商品のカバンは中が真っ赤でかわいかった)
調子に乗っているアリエッティと、慎重に自分の考えを示すポッド。 「挑まなくてもいい危険というものもある」という台詞は脚本にはなかったけど、この後の展開のためにもポッドの考え方を明確にしておきたかった。 アリエッティは今後もこれを理解することはないんだろうな。
ドールハウスの中に出てくる2人。 中の調度品はハーモニーという方法で描かれている。セルの裏側から着彩するやり方はナウシカの王蟲から高屋さんが一手に描いているけど、毎回本当に素晴らしい!アートです!
翔と初めて顔を合わせるシーンは脚本に「クライマックス!」と書かれていた。 僕なりにゾクゾクするシーンにしてみたけど、どうだったかなぁ。 アリエッティは言葉を出さないけど、彼女の気持ちを中心にしたつもり。
今夜はラピュタですね。 こちらは僕が唯一描いたラピュタ。 カレンダー用のイラスト(下絵)です。
「風立ちぬ」は「ポニョ」とは一転して影もしっかりついたコッテリ作画です。 二郎のメガネ周辺が面白いです。 止まっている部分も合成を使わずに同トレスにして息づいてる感じにしてます。(動画の人は大変だったでしょう)
翔が角砂糖をプレゼントしているのを見ているので、スピラーは自分なりに考えて野苺をプレゼントしようと思ったのでしょう。かわいいやつ。 あまり考えてないだろうけどアリエッティはそれを受け取る。 (小人たちの未来が明るいことへの願いを込めて入れたシーン)
脚本にはなかったけど、最後に翔に翔らしい言葉を発してもらって終わりにした。 翔は自分の運命と小人たちの運命を重ね合わせていた。アリエッティたちが元気に過ごしている限り、自分の心臓は動き続けるという、生きる宣言。 (冒頭の言葉があるので手術は成功したのでしょう)
宮崎監督からは容易にアリエッティを手に乗せてはいけないと言われていたけど、この手はジェントルマンの差し出す手だし、アリエッティが気持ちを変えて自分の意思で乗っているので大丈夫。 フィギュア愛好家の発想になることを宮崎監督は警戒していた。
青年の二郎の三等車と二等車のシーンは原画やりましたね。
原画を描くとき、僕はこんな感じに最初に全部の絵の計画とタイミングを作っちゃいます。 他の人の仕事のチェックするときは、これに足りなければ描き足すし、余計なら抜く。 どの絵が原画でどの絵が動画用参考か、わかりやすく組み立ててもらえるとチェックは助かります。