壁面装飾やメダルなど、レリーフを製作する彫刻家は、高い水準の絵画作品を残していることが多い。専門分化されてしまった絵画と彫刻の間をつないでいる造形感覚がレリーフにあるように感じる。

解剖学会でよく見かける描画方法。あらゆる線的情報をトレースする。前後関係がほとんどなく、視認性は極めて低いが、仕上がりは絵として興味深い。千葉正司「線描人体解剖学」より。以前居た技術員さんが、これと同じ描画スタイルの画家(研究者)を「千葉派の画家」と呼んでいた。

タンクの代表的な教科書"Form und Finktion"では、体表、筋、筋走行と付着部、骨格を並べて掲載している。比較によって内部を知るレイアウトは、美術用の解剖学書には多いが、医学の解剖学書ではあまり見られない。"W. TANK"(1964)より。

「もし人間が足と手を広げて仰向けにねかされ、コムパスの先端がその臍に置かれるならば、円周線を描くことによって両方の手と足の指がその線に接するから。さらに、人体に円の図形が作られるのと同様に、四角い図形もそれに見いだされるであろう。」森田慶一訳『ウィトルーウィウス建築書』より

美術解剖学は、How to drawではなく、人体や生物、およびそれらを表現した作品を観る目を養う学問なので、様々なスタイルや趣向を持つ作家に対応できると考えている。How to drawは個人スタイルを教えがちになる。自然物の構造と形態は、個人の造形趣向とは関係なく存在している。