「もし人間が足と手を広げて仰向けにねかされ、コムパスの先端がその臍に置かれるならば、円周線を描くことによって両方の手と足の指がその線に接するから。さらに、人体に円の図形が作られるのと同様に、四角い図形もそれに見いだされるであろう。」森田慶一訳『ウィトルーウィウス建築書』より
美術解剖学は、How to drawではなく、人体や生物、およびそれらを表現した作品を観る目を養う学問なので、様々なスタイルや趣向を持つ作家に対応できると考えている。How to drawは個人スタイルを教えがちになる。自然物の構造と形態は、個人の造形趣向とは関係なく存在している。
解剖学に限ったことではないが、専門的な情報は、教科書を読んで学ぶよりも、現場の他愛ない雑談や、詳しい人の身振り手振り、成果物とそれが出来るまでの過程を見る方がはるかに頭に入る。
筋の厚み。各筋がどの程度厚みを持っているかは、造形にとって重要な要素の一つだが、解剖の現場でしか調査できないので先行研究がほとんどない。ポール・リシェによる単離筋の断面図。添付は1枚目:僧帽筋、2枚目:広背筋、3枚目:三角筋中部、4枚目、脊柱起立筋。