美術解剖学に運動生理学が導入されたのは19世紀中頃。19世紀末には連続写真を用いた図も作成されていた。現代の教科書でもたまに見かけるが、アニメーターや運動を表現するCGクリエイターにとって有益な情報になるだろう。
私の周辺の解剖学や外科の先生は、詳細で繊細な線描が描ける。「イラストに描き起こして」と渡された原稿を超えるのにしばしば苦労するほど。医師の線描が画家の線描と違う点の1つは、プロポーション(全体に対する部分の比)がない。実際にほとんどの医学書にはプロポーションの話が出てこない。
腰あたりの冠状(前頭)断の性差。1枚目:男性、2枚目:女性。腸骨稜の外側やや下方が窪むのと、腰部の皮下脂肪層の違いが観察できる。非常にレアな図だが、トリミングにセンスの差が現れることを教えてくれる。図示することは結構奥が深い。
力こぶを作る上腕二頭筋。左:腕を自然に降ろした状態、中央:肘の屈曲+前腕の回内(親指を内に向ける)、右:肘の屈曲+前腕の回外(親指を外に向ける)。図示することは、相手に伝えにくい「程度」「方法」「位置や角度」などを一瞬で伝えてくれる。