作家の超絶技巧を見てモチベーションを得る学習者も居る。しかし技巧による理解は、どこまで表現できるのかを知るには有効だが、構造の理解には進まないことが多い。「構造を理解しよう」という意識の学習者には、視認性が高い図の方がスッと届くように思う。
人体の輪郭線は、多くの人が間違わずに描写できる。しかし、輪郭の内側の起伏になると線の強さ、長さ、方向が間違ってくる。輪郭より内側の線を拾うには、内部構造の走行、つながり、ボリュームをあらかじめ理解しておく必要がある。
美術解剖学の講師でメディカルイラストレーターのアーノルド・モローによる骨の描き方。モローは解剖学的構造を誰でも描けるように描写手順を示した。球や円筒で人体を描くことと美術解剖学の間に位置するような教育方法。
ヴェサリウス以降500年間、ほとんどの解剖図は表側からのみしか描かれなかった。裏から見るという単純なアイデアすら、発見して価値を見出すまでに長い時間がかかる。添付は指背腱膜の裏側(左、剥離)と表側(右、原位置)。
先日ご紹介したモローの書籍について現在入手困難との問い合わせがあったので追加掲載する。短時間で板書できる図は教員としても非常に参考になる。モローが医療用イラストを描いていたという点も良い。